『不条理の狭間で』

 

Bunkamuraギャラリーで開催された「アリス幻想綺譚2019」に出品した作品です。 

 

原作があるものをテーマとして絵にする時、やはり相当原作を読み込む事が大切ですし、自分の解釈も持つ事で更なる新しい物が創造されると考え、相当数の本、絵本、キャロルの特集本を読みました。そうしたらばいつもよりも強く思いのこもった絵になったため、ちょっと考えをまとめてみることにしました。(普段はあまりやらない作業です。。)

 

 

一解釈として駄文かもしれませんがよろしければお読み下さい↓

 

 

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まず、今回の不思議の国のアリスは原作が夢物語という事もあり、全体にどこかこの世と違うものにしたくて普段の私の絵よりかなり輪郭を太くし、劇場のようなカーテンを配しました。

 

 

一番大きい軸として、世間の色々などうにもならない事に負けずに、守るべきものを携えて少女(アリス)に強く生きてほしいという思いをこめる事に。

 

 

原作で女王は白い薔薇を赤い薔薇に塗らないと激高し、塗り損なったトランプ兵の首をはねよといいますが、そんなこだわりはなくなってほしいと思う私の気持ちから、赤い薔薇も白い薔薇も散り、争いごとは消え、赤と白を混ぜたピンクの薔薇が茂り始めています。 

 

 

女王は原作でアリスにクロッケー大会に参加するように促し、 槌はフラミンゴ、球はハリネズミなのですが私はハリネズミを長年飼っているため、原作で一番疑問を感じた部分なのでハリネズミをアリスの守るべき象徴としました(^_^; 。 

 

 

また、ハートの女王はどちらかというと原作ではトランプのスペードの女王に近い描き方をされますが、占いでは愛情深い女性、溺愛傾向、母性本能の強い女性であるのでそういった感じも込めて描いています。原作でも首をはねよとは言いますが、事実誰も本当にはねられてはいないのです。

 

ただ愛情は時に重しにもなるので、そういった事にもアリスには屈してほしくないなとこういう構図にしました。

 

後ろのトランプはトランプ占いで希望を感じるもの です。 

(トランプ占いには様々な解釈がありますが、私はポジティブなものを抜粋しています。)

 

*ハートのエース=究極の愛、全てを優しく包み込む愛の力、協力者が次から次へあらわれる。仕事に大切な事はお金だけではないことに気づく)幸運や成功を意味し、素晴らしいチャンスや楽しい知らせの訪れ。

 

*クラブの6=仕事面では、事業拡大や新規開拓、昇進等嬉しい話が多く出てくる。  

 

*クラブの7=好い事づくめのラッキーカード。人と人との間にたってうまくまとめて道が開けてくる。 

 

*ダイヤの9=積極性や冒険ごと 

 

 

後ろのフラミンゴは休息を始めました。

平和の始まりです。

 

制作している間に様々な少女を苦しめるニュースが相次ぎ、とても悲しい気持ちにもなりました。どうか全ての少女が強く賢く幸せに、不条理な事に負けず、生き抜いてほしい。。 

遥か昔のルイスキャロルもどこかそんな思いを持っていたのではないか、自分の気持ちを重ねて描きました。

 

最後まで読んでいただき、誠にありがとうございました。

 

2019年2月吉日 

 

寒河江智果